未払い残業代…労働基準監督署の調査と民事裁判との関係(その1)


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com」の
加賀英治です。

ようやく涼しくなりましたね。

さて、今回は、
未払い残業代
について、
労働基準監督署の調査民事裁判の関係について、
書いてみたいと思います。

未払い残業代について、労働基準監督署が調査
に入ったときには次のような対応をとることが
多いものです。

過去6ヵ月(1年など、最大2年)
遡及して支払うこと。

(どれくらい遡及するかは、
労働基準監督官によって異なると思います。)

それで、次のような事例を考えてみましょう。

会社は、何とか労働基準監督官の言うことを素直に
聴いて、無事支払ったとします。

例えば「6ヵ月遡って支払うこと」という指示
に従って支払ったとしましょう。

仮にその後、民事裁判で、消滅時効まで(2年遡及)の残りの
未払い残業代を請求されたとしたら

どうなるのでしょうか?

きっと、ご覧頂いている皆様の中には、つぎのような
お考えの方も多いと思います。

「以前に労働基準監督署が納得するような対応を
とって、それで調査が終了したんだから、
そんなことはないだろう?

こんなふうに考える方は多いの
ではないでしょうか?

しかし、実際はそのような考えが通用しないのです。

つまり、労働基準監督署の調査や是正報告書の提出が
終わったとしても、後日、民事で請求された場合には、
消滅時効まで残りの残業代を支払わなければ
ならなくなるということです。

ですので、労働基準監督署の調査の
対策や対応を経験された方、つまり、
企業の担当者、社労士、弁護士
であれば、だれでも思うことがあります。

それは、労働基準監督署で終われば良い方だ。
民事裁判になったらもっと請求されるから大変だということです。

しかし、次のようにお感じになる方も多いと思います。

「それだったら、労働基準監督署の調査って一体なんだ
ったんだ?どうせなら最初からちゃんと調べて2年なら2年と言って
くれればいいだろう!」

このようなお言葉が聞こえてきそうです。
確かに当時担当した労働基準監督官に対して
怒りをお感じになることも御尤もという
気が致します。

しかしながら、担当した労働基準監督官の言い分
として次のようなものが考えられます。

(一例として)
調べた当時、明らかに
未払い残業が把握できた資料は、
過去6ヵ月までだったので


この場合は、把握している資料に応じて
遡及支払いを求めるしかありません。

労働基準監督官としては、きっとこんな心境でしょう。

「私は私の仕事を私の判断で行ったに
すぎません。さらに様々な証拠が見つかって未払い残業代が発覚した
としても私に責任はありません。」

「そもそも未払い残業代が発生しているのは、企業が悪いのであって
労働基準監督官のせいではないんじゃないですか?」

ということですね。

でもなんか腑に落ちないということもおありかと思います。

それでは、そもそも労働基準監督官に調査の内容について
文句が言えるのでしょうか?

過去にこんな判例があります。(東京労基局長事件)
簡単に言いますと次のようなものです。

労働者が自分に対して会社が労働基準法違反を
しているからということで、監督や指導を求めたところ、
労働基準監督署は監督指導しませんでした。

それを不服としたものです。

これに対して、裁判所は、労働者からの申告は、監督の
契機(きっかけ)にはなりえるが、労働基準監督官がそれを
受けて調査するかどうかについて義務を
負わせるものではない。

つまり指導監督するかどうかの判断は、
基本的に労働基準監督署の自由だということです。

それで、労働基準監督官がどこまで指導や監督を行うか
について強制できない以上、企業が労働基準監督官の
仕事に文句を言うことはできないということになります。

ですから、労働基準監督官の指導や監督を受けて、なんとか
未払い残業代の支払いを終えたとしても、後日、労働者から民事上
の請求が生じることはあり得ると念頭に置くべきでしょう。

でもそれなら一体どうすればいいんだ?
ということかと思います。

その件については、次回にしたいと思います。

よろしければ、次の項目もご参考下さい。
労働基準監督署とはどんな役所?
労働基準監督官とは何をする人?

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