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休業手当…会社都合による休業手当の内容はどうしたらよいか?


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com
の加賀英治です。

さて、今回は
会社の都合で休業した場合に賃金を支払うべきかどうか?
という問題について考えていきたいと思います。

特に昨年は、東日本大震災とこの
休業手当の問題が焦眉の急として話題となりましたね。

今回は特に震災には触れず、ピュアに
休業手当の一般的なことについて書きたいと思います。

さて、昨今の日本をとりまく事情を考えますと…
震災にかかわらず、というかかかわっている部分も
多いのですが、経済不況がいよいよ深刻さを増していると思います。

このような中で、中小企業を経営されているあなた、
また、中小企業の管理部門に所属されているあなた
は不本意にも次のような状況を一度は考えたことが
あるかもしれません。

つまり、会社が経営的な危機に陥り、
やむを得ず休業状態になってしまうことを一度は考えたことが
あるかもしれないということです。

こんなときに緊急避難的にとりあえず思い浮かぶのは、
次のようなものではないでしょうか?

社員に休業補償をしなければならないな。

確かにそれは必要なことです!
しかし、同時に次のような疑問も
湧くのではないでしょうか?

会社都合の休業の場合には、労働者に対して
賃金の全額を負担しなければならないのか?

それとも巷でよく言われるように…

賃金の6割を支払えば良いのか?

法的にはどうしたらよいのか?
このような疑問です。

以上について論じる前にまず、
賃金全額を負担しなければならない場合と
6割(正確には、平均賃金の6割)で良い場合の違いについてみてみましょう。

◆賃金全額を負担しなければならない場合

賃金を全額負担しなければならない根拠は、
実は民法の中に書かれています。

次のようなものですが、御紹介します。

民法536条2項(債務者の危険負担等)

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行する
ことができなくなったときは、債務者は、反対給付を
受ける権利を失わない。

なかなか小難しいことを言ってますねぇ。
といった感じで、思わず閉口してしまいますが…。

分かりやすく言えばこういうことです。
会社の責任で労働者が労務を提供できない場合には、
労働者は実際に働いていないとしても
会社から賃金をもらう権利があるのです。

そこで、疑問に思うのは、
会社の責任って具体的に
どんな場合をいうのか?
ということかと思います。

これも小難しいことを言うと次のような感じです。
故意・過失または信義則上これと同視すべき事由」がある場合
ということになります。

では、具体的にどんな場合を想定しているのか?
ということかと思います。

例えば、会社の経営陣が不正を行ったために
行政上の営業停止処分を喰らって休業せざるを得ないとき
などが考えられます。

逆に使用者の責めに帰さない場合には次のような
理由があります。ちょっと確認しましょう。

・天災事変、どうにもならないような経営情勢などの不可抗力
・労働者に責任がある場合

つまり、休業と言ってもいろいろな理由があるというわけですね。
しかしながら、多くのケースでは、結局のところ、会社の経営責任を問われて
賃金の全額の支払いを求められる可能性があることは否定できないと思います。
(理由は、後ほど書きます。)

それだったら、ほとんどの場合、賃金全額を
支払わなくてはならないということじゃないか?
というお怒りの声も聞こえますが、
少し待ってください。

経営者のあなたにとって有益な情報は
最後にお示ししますので、
最後まで辛抱強くお付き合いください。

ところで、賃金の6割を支払えば良いとは
どういう場合でしょうか?

◆賃金の6割を支払えば良い場合

この点もまずは、
根拠をお示ししたいと思います。
これについては、実は労基法に記されているのです。

労働基準法26条

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、
使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の
100分の60以上の手当を支払わなければならない。

以上のようになっています。

ちなみに正確には、賃金の6割ではなく、平均賃金の6割だということを
覚えておいてください。
(平均賃金の考え方は、また別の稿でお示しいたします。)

これを読んだあなたはこのように感じるでしょう。
「え!?使用者の責って、さっき賃金の全額を支払わ
なければならないんじゃなかったの?」

そうですよね。
先ほどは、確かにそのように述べました。

つまり、どこが違うかというと、
「使用者の責め」の
程度が異なるということです。

ちなみに判例によると
次のような考え方を
示しています。

本条(労基法26条)の
休業手当の制度は、

労働者の生活保障という観点から
設けられたものであることを考えると、

本条の使用者の責に帰すべき事由とは、
取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点
を踏まえた概念というべきであって、

民法536条2項の債権者の責に帰すべき事由よりも広く、
使用者側に起因する経営、管理上の障害を
含むものと解される。」

最高裁判決:昭62.7.17 ノース・ウェスト航空事件

これまた、判決文(抜粋)をそのままで恐縮です。

簡単に言いますと、
労働基準法で支払うように命じている
休業手当とは、民法の使用者の責よりも
程度をゆるく設定しているんですよ。

その理由は、労働者の生活保障
という目的にあります。」

ということなのです。
それを法的に保障するために罰則付きの法律で、
支払いを強制しているということなのです。

ちなみに26条違反、つまり、最低でも平均賃金の6割の
休業手当を支払わない場合には、
30万円以下の罰金に処せられます。
(以上、労働基準法:120条1号

では、どのように使用者の責を
具体的に考えればいいの?
ということかと思います。

一例として、通達に記されている事例を
御紹介いたしましょう。

これは「経営障害による休業」という場面です。

親会社からのみ資金や資材の供給を受けて事業を営んでいる
下請工場があります。

その工場が、現下の経済情勢から親会社が経営難
陥り、資材、資金の獲得に支障をきたすようになりました。

その結果、当該工場が必要とする供給を受けられなく
なり、休業となってしましました。

この場合には、
使用者の責に帰すべき休業
にあたるとしています。

根拠通達:昭23.6.11 基収1998号

簡単にいうと、世界的もしくは全国的な経済状況が悪化している
ことが直接の理由で休業したということです。

確かにこれは、民法でいうところの
「故意・過失それに類する事案」
とまでは言えないでしょう。

しかしながら、大きな意味では、
会社の責任であるととらえて、労働者に対して少なくとも
平均賃金の6割の支払うように求めているのです。

すなわち、
「会社に故意や過失があったとまでは言えないけれど、経営に関する
障害が生じたことは確かですよね。

従って、労働力を売ってしかカネを稼げない労働者に対して、
経営者としてせめて労基法での最低限の補償をしてください。」

ということなのです。
おわかりになったでしょうか?

しかし、それでも、
なんだかわかったようなわからないような…
ということかと思います。

それで、実際にはどんなケースが多いのかというアプローチで、
現実的に考えてみたいと思います。

実際には、次のようなケースが多いと思うのです。
つまり、純粋に労基法の支払いのみで足りる事案は
少ないかもしれないということです。

通達では、経営者ではどうにもならない
経済状況の悪化に遭遇する場面のみを前提にした事案でした。
しかし、実際にはこんなに単純な事案というのは
少ないのではないか?と思うのです。

実際の事案では、細かく事実を確認すると
経営者の手落ちといえる問題が全くゼロかというと
そうではないと思うのです。

(以下、企業経営者の方々向けに情報発信しており、
誠に恐縮で、言うに憚るのですが…)

残念ながら、経営者も人の子です。
労働者の給与に手をつける前に経営者として打つべき手を打ったといっても
どこかに手落ちがあるかもしれないのです。

例えば、役員報酬を少しもカットしていない、もしくはカットが足りない。
遊休資産の売却などを全く考慮していなかったなどで、休業に踏み切る場合です。

もちろん、上記の例示した状況が、どの程度考慮されるのかは分かりません。

しかしながらこのように考えると、安易に休業に踏み切ったと評価される可能性がゼロ
ということはなかなかあり得ないということは、少なくともイメージ
できたのではないかと思います。

言うまでもなく、
このように、少しでも付け入る隙がある場合には、
労働者から、民法の規定どおり、全額支払いが求められる
可能性は高いでしょう。(最悪は訴訟の場で。)

長々と書きましたが、要点はというと…
賃金全額を支払わなければならない問題が
内在している可能性はある」ということです。

では、以上のリスクを前提にしてどのように対策を立てることができるでしょうか?

とりあえず、平均賃金の6割とプラスαくらいを
支払っておく…あとは、労働者の出方をみる…それも考えられますが…

一番いいのは、就業規則を作成するときに、休業に関する
次のような規定を盛り込むことです。

会社の責に帰すべき休業により就業できなかった場合には、
民法第536条第2項の定めによらず、平均賃金の6割を支払い、
それで足りることとする。

この文章は、労基法26条の最低限度である平均賃金の
6割は確保されているので、労基法違反にはなりません

かつ、民法536条2項の前提条件となる会社の故意・過失が
あっても、就業規則の定めによって、平均賃金の6割で
押さえることができるのです。
つまり、全額を支払わないでよいとすることができるのです。

このようなわけで、労基法対策として有効であるのみならず、
民事的な請求を抑止できる大変役に立つ条文と言えます。
是非、参考にしてみてください!

(以下は、本ブログのテーマ外ではありますが
補足して申し上げておきます…)

しかし、従前から作成してある就業規則を
変更するとなると別の問題が生じます。

それは、労働条件の不利益変更という問題です。

つまり、基本的には、就業規則を労働者に対して不利益に変更する場合には、
労働者との個別合意が必要となり、強行的に規定するには、
合理性が求められるということです。

この問題は、ちょっと重い問題となります。
また、
休業手当の一方的な規定変更がどの程度
認められるかは、判例等の情報がないので、何とも言えません。

ちなみに私見ではありますが、あまりにも経営状況が切羽詰まった段階で行うと、
この厄介な問題が先鋭化することが大いに考えられます。
ですから、慎重に行うことが大事かと思います。

なるべく平和な時期に文章を追加することが
必要だと思います。

また、労働者に説明するにもそれなりの理由や
ロジックも必要です。

貴社なりに今のうちに理由を考えておくとよいでしょう。

このように平時において、窮地に陥ったときの備えをすることは、会社が生き残るうえで
必要なことですし、それは、一人でも多くの労働者の方々の生活を守ることに
つながると考えます。

そのことを念頭に休業手当についても良い案を模索することは
必要なことだと考えます。

ということで、今回は
休業手当について
考えてみました。

また、有益な情報を配信していきたいと思っております。

次回以降は、御要望の多い是正報告書の書き方について
書いてみたいと思っております。

また次回も御期待下さい!