Tag Archive for 平均賃金

解雇予告手当と解雇予告、どちらがよいのか?


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com
の加賀英治です。

先回は、
解雇について労働基準監督署は、
その是非を判断できないことについて
御説明しました。

今回は、労働者が解雇予告手当の支払いを
求めて労働基準監督署に駆け込んだ場合、
どうなるのかについて書きたいと思います。

まさにこれは、
労働基準法に違反しているかどうかの
ど真ん中の問題ですので、しっかりと御説明
したいと思います。

それでは、以下説明に入ります。

あなたは、
解雇予告や解雇予告手当について
どんなお考えをお持ちでしょうか?

経営者のあなたは、「そういえば、1ヵ月前に予告しなければ
ならないっていうことだったかな?」という感じで
何となく覚えているかもしれませんね。

実は労基法では、大まかに2つのパターンを想定して
定められています。
(以下、労働基準法第20条要旨)

・解雇日の少なくとも30日前に予告していること
・即日解雇の場合には、少なくとも平均賃金の30日分を
 支払うこと

となります。

以上、2つのケースについて
共通するのはどんなこと
でしょうか?

それは、
解雇を決めても少なくとも1ヵ月は
金銭的な補償をしてくださいよということです。

この意味は、生活の困窮緩和や転職の期間などを勘案して、
やはり少なくとも1ヵ月は会社が所得補償してあげなさいという
こととなります。

では、具体的な事例を基に考えてみましょう。

例えば、残念ながら
解雇せざるを得ない従業員が
出たとしましょう。

経営者のあなたは、
できれば即日解雇にしたい
と思っているとします。

その際、
解雇予告すべきでしょうか?
それとも即日解雇で解雇予告手当を
支払う方がよいでしょうか?

では、経営者のあなたなら、
どうしたら良いと思いますか?

結論から言うと、即日解雇で
解雇予告手当を支払うよりも
解雇予告する方が良いケースが多い
と個人的には思います。

なぜでしょうか?

これは、解雇の理由にもよるでしょうが、
従業員の勤怠不良や勤務態度が不良等、従業員の不手際
による場合には、解雇の少なくとも30日前通告する方が良い
思います。

なぜかと言えば、このようないわゆる不良社員の場合には、
解雇を通告された以後、出勤しなくなるケースが
かなり多いからです。

ですから、結果的に欠勤控除が多くなり、
解雇日までの賃金が安く抑えられる
可能性が高いということになります。

以上の理由と引き継ぎ等の観点から、
私は個人的には、十分前もって
解雇予告をするようにと
御指導しております。

ですから、不良社員に対して、頭に血が上った勢いで、
「明日から来るな!」ということのないように
自制することが大切となります。

ここはグッとこらえて、少なくとも30日後に解雇する旨の
通告書を本人に手交すると肝に銘じてください!

しかし、従業員が重大な不祥事を起こした場合には、
対外的に即日解雇せざるを
得ない場合も時々あります。
(重大な不祥事による懲戒解雇事案など。)

こういった緊急度の高い解雇の場合には、
やはり即日解雇せざるを得ないでしょう。

この場合には、最低でも平均賃金の30日分の
解雇予告手当を支払えば問題ありません。
(解雇が有効か無効かの是非が争われれば
裁判所で決着せざるをえません。)

しかしながら、労働者の重大な過失等の場合には、そもそも
解雇予告手当を支払わない
ことも可能な場合があります

労働基準法第20条には但し書きとして
次の内容が書かれているからです。

「但し、天災事変その他やむを得ない事由のために
事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に
帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。

文中の「この限りでない」というのは、
解雇予告や解雇予告手当の規制は適用にならない
ということです。

この労働者の責に帰す事由で解雇予告をしない場合や
解雇予告手当を支払わない場合には、事前に労働基準監督署に
解雇予告手当除外認定を受けなければ
なりませんので、御注意ください!

事後ではだめですから、お気をつけてください!

この除外認定の手続き詳細については、
本稿では省略しますが、大抵2週間程度はかかる
と言われています。
(もちろん案件によって調査期間の長短はあります。)

それで、
労働基準監督官にこんなことを
言われたことがあるものです。

除外認定が認められるのもちょっと時間がかかるので、
解雇予告してもらえませんかね?

と言ってくることもあります。
もちろんこれにこたえて、通常の解雇予告に
切り替えても良いでしょう。

しかしながら、後日の訴訟に備えてベストエビデンス
(証拠固めの完璧を目ざすこと。)を準備するためにどうしても
労基署の除外認定をとりたいということもあり得ると思います。

このような場合には、やはり
除外認定をとることに
こだわるべきです。

こういった事情がないならば
監督官の言うように除外認定の調査にも時間を要するので、
一層のこと普通の解雇予告を行う方が会社の労力は少ないでしょう。

こんな感じで、
解雇予告と
解雇予告手当を整理して事情に応じて選択するように
考えていけばよいと思います。

今回は、以上となります。

また、次回以降、
解雇予告手当の支払いについて
もう少し突っ込んだことを書きたいなと思っています。

内容としては、解雇かどうか分かりづらいような
事案について監督署はどんな判断を行うのかと
いうような内容になると思います。

また、ご覧いただければ幸いです。

労働基準監督署は解雇の何を判断するのか?


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com
の加賀英治です。

今回は、会社からよくある反応の一つについて
お答えしたいと思います。

中小企業を経営しているあなた
また管理部門のあなたにももしかしたら遭遇することが
あるかもしれませんので、御参考いただければと思います。

どんなことかと言いますと…

最近労働者を解雇したのですが、この件で労働者が
労働基準監督署に駆け込んだ場合、労働基準監督署は
この解雇を認めてもらえますかね?
こんな質問や反応です。

こういったことに関連したことについてお答えしたいと思います。

たまにこんなことがあります。

労働者が解雇されたあと、労働基準監督署に
駆け込んで、「こんな解雇取り消してください!」
というのです。

つまり、労働者の中には、労働基準監督署が会社が下した
解雇が
不当であることを判断してくれたり、その権限で
解雇を
取り消してくれると思っている人がいるのです。

こんなことが果たして、
労働基準監督署に
できるのでしょうか?

そもそも
労働基準監督署が
解雇について
何を行うことができて
何が行えないのでしょうか?

こういった内容を以下、
御説明していきます。

先ほどの労働者の申し出について、
労働基準監督署はどのように
判断し、対応するのでしょうか?

ちょっとその前に以下の点を
確認しておきたいとおもいますので、
御面倒でもお読みください。

労働基準監督署が解雇の無効の判断が行えるか否かを
考えるにあたって以下の2点にまとめられると思います。

1.労働基準監督署が解雇の有効や無効を判断できるか?
2.無効な場合には、それを取り消せる法的な権限があるか?
ということになります。

以上を判断する場合には、少なくとも次の要件が必要になりますね。
・労働基準法に解雇が無効である条文(法的根拠)があること。
・労働基準監督署が解雇の有効か無効かを判断でき、
 無効にできる権限について法的な根拠があること。

まず、少なくとも労動基準法において、
労働者は、労働基準監督署に解雇無効を申し立てることができて、
取り消せるというような条文が必要ですね。

しかし、こんな条文は
労動基準法にはない
のです。

確かに昔は、労働基準法第18条の2という条文があって、
不合理で社会通念上不当である
解雇は
無効であるというものがありました。
(正確な表現ではありませんが)

しかし、この条文は、
労働基準法に書かれているにもかかわらず、

労働基準監督署が
解雇の有効や無効を判断したり、

法違反で是正勧告するような内容ではない
とされていました。

これはどういうことなのでしょうか?

これはつまり、
解雇が有効か無効かは、そもそも
民事的なルール
なのだということです。

経営者のあなた、管理部門のあなたも
あまり意識したことがないかもしれませんが、
解雇とは雇用契約を会社から一方的に解消すること
ということになります。

すなわち、雇用契約も契約の一種です。
それで、契約に関することは民法に書かれている
ということなのです。

ちなみに民法をみると
解雇はいつでも自由にできる
書いてあるのです。(民法627条「定めのない雇用の解約の申し入れ」
(意外に思った方も多いと思いますが…)

そこで、あなたは、
だったら、別に他の条文を作らなくていいじゃないか!
と言いたくなるでしょう。

しかし、
解雇とは、労働者より経済的立場の強い会社が
行う契約解消処分ですね。

そのことを考えると、いくら
解雇自由だからといって、会社が特に大した理由もなく
バンバン首を切っていったら労働者の雇用は不当にも保護
されないと日本の司法は考えているのです。

いわゆる、力関係の強い会社は、権利を濫用
しやすい立場にあるので、
解雇は慎重に判断しますよ
と考えているのです。
(経営者のあなたには申し上げ辛いのですが…)

さらに以下のような日本独特な社会事情も
考慮されています。
どういうことかというと…

依然として終身雇用制を前提として社会は動いているので、
一度職を失ったらなかなか従前以上の待遇で再就職できない
という社会的な事情を考慮にいれて、会社の行う
解雇は厳しめに判断しているということです。

それによって、解雇は自由とはいうものの実質的には
解雇は無効になりやすい
傾向になってきたのです。

巷でよく言われるように
会社が解雇を行うのはなかなか難しいよ
というのは、こういった理由によるのです。

これらのことが、
判例の蓄積によって
明らかになってきました。
具体的には以下のような内容が判例でよく言われます。

社会通念上相当でなく合理的でない解雇は無効である

難しい言葉でいうと「解雇権濫用法理」といいますが、
こんな統一的な理論を導き出したのです。

以上の理由があって、キチンと明文化した民事的ルール
が必要だという話になって、労働基準法の中に
解雇ルールが一時期、明文化されたということです。

では、その民事的なルールが労働基準法に記載
されていたのはなぜでしょうか?

これは、単に労働関係の民事ルールが何もないので、
どこかに載せなければならないよね?
ということで、無理やり労基法に放り込んだというだけです。

ちなみにこの条文は、今は削除されています。
なぜでしょうか?

それは、平成19年労働契約法という
労働の民事的なルールが新設されたからです。

そこの16条に全く同じ内容の条文を
載せています。(以下、条文となります。)

解雇は、客観的に合理的な理由を書き、社会通念上相当
であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、
無効とする。

このように今は、労働契約法で労働の民事ルールを
定めているということで、解雇についても同様だと
確認していただければ結構です。

ちょっと長々と書きましたが、何を言いたいのかというと、
解雇が有効か無効かは、そもそも労働基準法違反
という問題ではなく、民事的な判断なのだから、
労働基準監督署では取り扱わないのですよ。ということです。

つまり民事不介入というわけです。

つまり、最終的には、裁判所で民事事件として
決着を付けるべき問題となるということです。

では、冒頭のように労働者が
「こんなことがあって解雇された
んですよ。こんな解雇っておかしいですよね?」
と監督署に申し出たとき、

果たして監督署はどんな対応をするのでしょうか?

監督官は、労働者に対して次のように
言うことが想定されます。

「あなたは、即日解雇だったのですか?
それとも解雇の何日前に通告されたのですか?

労働基準監督署としては、解雇の予告が少なくとも
30日前になされたのか、または即日解雇であれば、
少なくとも平均賃金30日分の解雇予告手当を
支払ったのかが知りたいのです。

それで、もしこれらが適正になされていない
のであれば、会社に是正指導しますよ。

とまずはこんなことを言うでしょうね。
(もちろん、解雇通知書などがあれば
証拠となる書類をなるべく多く出してくれ
ということも言うでしょう。)

次にこんなことを言うでしょう。

「そうですか。そんな理由で解雇されたのですか。
ちょっとひどいですよね。
確かにそんな理由での解雇は、通常民事裁判では、
会社は負ける可能性は高いと思います。

でも監督署は、解雇そのものが有効か無効かを
判断することはできないのです。

まあ、解雇予告や解雇予告手当のことを会社に
言うときにちょっとその辺も言ってみても
いいですけどね。

でも、私たち監督官がこんなこと言っても会社は
自分たちがやった解雇に非があることを
認めることは、まずないですよ。

申し訳ありませんが、監督官はそれ
以上のことはできませんから。

申し訳ないですけど、会社が解雇を撤回する
ことはほとんどありませんから、
あんまり期待はしないでくださいね。」

とこんな感じの会話になるのが
関の山でしょう。

ちなみに先ほども言いましたが、民事不介入ですから、
解雇が有効か無効かを意見することすら嫌がる
監督官もいると
思われます。

とにかく、常に法を根拠としてしか動けない
のが行政組織であり、この点についてはある意味
悲しい定めとも言えるでしょう。

ところで、実に、この会話にすべての
ポイントが入っていることに
注目していただきたいと思います。

つまり、先ほど来述べているように民事には不介入ですから、
解雇の是非の判断には踏み込みません。

ということ。

そして、
解雇予告が30日前になされていないなら、
解雇予告手当をその分とりましょう。
ということになります。

理由は、
労働基準法第20条違反(解雇の予告)
なので
ということになります。

ということで、今回はここまでです。

続きの
解雇予告
解雇予告手当については、
また違う稿で書きますので、しばらくお待ちください!

それではまた次号をご覧いただければ幸いです。

休業手当…会社都合による休業手当の内容はどうしたらよいか?


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com
の加賀英治です。

さて、今回は
会社の都合で休業した場合に賃金を支払うべきかどうか?
という問題について考えていきたいと思います。

特に昨年は、東日本大震災とこの
休業手当の問題が焦眉の急として話題となりましたね。

今回は特に震災には触れず、ピュアに
休業手当の一般的なことについて書きたいと思います。

さて、昨今の日本をとりまく事情を考えますと…
震災にかかわらず、というかかかわっている部分も
多いのですが、経済不況がいよいよ深刻さを増していると思います。

このような中で、中小企業を経営されているあなた、
また、中小企業の管理部門に所属されているあなた
は不本意にも次のような状況を一度は考えたことが
あるかもしれません。

つまり、会社が経営的な危機に陥り、
やむを得ず休業状態になってしまうことを一度は考えたことが
あるかもしれないということです。

こんなときに緊急避難的にとりあえず思い浮かぶのは、
次のようなものではないでしょうか?

社員に休業補償をしなければならないな。

確かにそれは必要なことです!
しかし、同時に次のような疑問も
湧くのではないでしょうか?

会社都合の休業の場合には、労働者に対して
賃金の全額を負担しなければならないのか?

それとも巷でよく言われるように…

賃金の6割を支払えば良いのか?

法的にはどうしたらよいのか?
このような疑問です。

以上について論じる前にまず、
賃金全額を負担しなければならない場合と
6割(正確には、平均賃金の6割)で良い場合の違いについてみてみましょう。

◆賃金全額を負担しなければならない場合

賃金を全額負担しなければならない根拠は、
実は民法の中に書かれています。

次のようなものですが、御紹介します。

民法536条2項(債務者の危険負担等)

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行する
ことができなくなったときは、債務者は、反対給付を
受ける権利を失わない。

なかなか小難しいことを言ってますねぇ。
といった感じで、思わず閉口してしまいますが…。

分かりやすく言えばこういうことです。
会社の責任で労働者が労務を提供できない場合には、
労働者は実際に働いていないとしても
会社から賃金をもらう権利があるのです。

そこで、疑問に思うのは、
会社の責任って具体的に
どんな場合をいうのか?
ということかと思います。

これも小難しいことを言うと次のような感じです。
故意・過失または信義則上これと同視すべき事由」がある場合
ということになります。

では、具体的にどんな場合を想定しているのか?
ということかと思います。

例えば、会社の経営陣が不正を行ったために
行政上の営業停止処分を喰らって休業せざるを得ないとき
などが考えられます。

逆に使用者の責めに帰さない場合には次のような
理由があります。ちょっと確認しましょう。

・天災事変、どうにもならないような経営情勢などの不可抗力
・労働者に責任がある場合

つまり、休業と言ってもいろいろな理由があるというわけですね。
しかしながら、多くのケースでは、結局のところ、会社の経営責任を問われて
賃金の全額の支払いを求められる可能性があることは否定できないと思います。
(理由は、後ほど書きます。)

それだったら、ほとんどの場合、賃金全額を
支払わなくてはならないということじゃないか?
というお怒りの声も聞こえますが、
少し待ってください。

経営者のあなたにとって有益な情報は
最後にお示ししますので、
最後まで辛抱強くお付き合いください。

ところで、賃金の6割を支払えば良いとは
どういう場合でしょうか?

◆賃金の6割を支払えば良い場合

この点もまずは、
根拠をお示ししたいと思います。
これについては、実は労基法に記されているのです。

労働基準法26条

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、
使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の
100分の60以上の手当を支払わなければならない。

以上のようになっています。

ちなみに正確には、賃金の6割ではなく、平均賃金の6割だということを
覚えておいてください。
(平均賃金の考え方は、また別の稿でお示しいたします。)

これを読んだあなたはこのように感じるでしょう。
「え!?使用者の責って、さっき賃金の全額を支払わ
なければならないんじゃなかったの?」

そうですよね。
先ほどは、確かにそのように述べました。

つまり、どこが違うかというと、
「使用者の責め」の
程度が異なるということです。

ちなみに判例によると
次のような考え方を
示しています。

本条(労基法26条)の
休業手当の制度は、

労働者の生活保障という観点から
設けられたものであることを考えると、

本条の使用者の責に帰すべき事由とは、
取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点
を踏まえた概念というべきであって、

民法536条2項の債権者の責に帰すべき事由よりも広く、
使用者側に起因する経営、管理上の障害を
含むものと解される。」

最高裁判決:昭62.7.17 ノース・ウェスト航空事件

これまた、判決文(抜粋)をそのままで恐縮です。

簡単に言いますと、
労働基準法で支払うように命じている
休業手当とは、民法の使用者の責よりも
程度をゆるく設定しているんですよ。

その理由は、労働者の生活保障
という目的にあります。」

ということなのです。
それを法的に保障するために罰則付きの法律で、
支払いを強制しているということなのです。

ちなみに26条違反、つまり、最低でも平均賃金の6割の
休業手当を支払わない場合には、
30万円以下の罰金に処せられます。
(以上、労働基準法:120条1号

では、どのように使用者の責を
具体的に考えればいいの?
ということかと思います。

一例として、通達に記されている事例を
御紹介いたしましょう。

これは「経営障害による休業」という場面です。

親会社からのみ資金や資材の供給を受けて事業を営んでいる
下請工場があります。

その工場が、現下の経済情勢から親会社が経営難
陥り、資材、資金の獲得に支障をきたすようになりました。

その結果、当該工場が必要とする供給を受けられなく
なり、休業となってしましました。

この場合には、
使用者の責に帰すべき休業
にあたるとしています。

根拠通達:昭23.6.11 基収1998号

簡単にいうと、世界的もしくは全国的な経済状況が悪化している
ことが直接の理由で休業したということです。

確かにこれは、民法でいうところの
「故意・過失それに類する事案」
とまでは言えないでしょう。

しかしながら、大きな意味では、
会社の責任であるととらえて、労働者に対して少なくとも
平均賃金の6割の支払うように求めているのです。

すなわち、
「会社に故意や過失があったとまでは言えないけれど、経営に関する
障害が生じたことは確かですよね。

従って、労働力を売ってしかカネを稼げない労働者に対して、
経営者としてせめて労基法での最低限の補償をしてください。」

ということなのです。
おわかりになったでしょうか?

しかし、それでも、
なんだかわかったようなわからないような…
ということかと思います。

それで、実際にはどんなケースが多いのかというアプローチで、
現実的に考えてみたいと思います。

実際には、次のようなケースが多いと思うのです。
つまり、純粋に労基法の支払いのみで足りる事案は
少ないかもしれないということです。

通達では、経営者ではどうにもならない
経済状況の悪化に遭遇する場面のみを前提にした事案でした。
しかし、実際にはこんなに単純な事案というのは
少ないのではないか?と思うのです。

実際の事案では、細かく事実を確認すると
経営者の手落ちといえる問題が全くゼロかというと
そうではないと思うのです。

(以下、企業経営者の方々向けに情報発信しており、
誠に恐縮で、言うに憚るのですが…)

残念ながら、経営者も人の子です。
労働者の給与に手をつける前に経営者として打つべき手を打ったといっても
どこかに手落ちがあるかもしれないのです。

例えば、役員報酬を少しもカットしていない、もしくはカットが足りない。
遊休資産の売却などを全く考慮していなかったなどで、休業に踏み切る場合です。

もちろん、上記の例示した状況が、どの程度考慮されるのかは分かりません。

しかしながらこのように考えると、安易に休業に踏み切ったと評価される可能性がゼロ
ということはなかなかあり得ないということは、少なくともイメージ
できたのではないかと思います。

言うまでもなく、
このように、少しでも付け入る隙がある場合には、
労働者から、民法の規定どおり、全額支払いが求められる
可能性は高いでしょう。(最悪は訴訟の場で。)

長々と書きましたが、要点はというと…
賃金全額を支払わなければならない問題が
内在している可能性はある」ということです。

では、以上のリスクを前提にしてどのように対策を立てることができるでしょうか?

とりあえず、平均賃金の6割とプラスαくらいを
支払っておく…あとは、労働者の出方をみる…それも考えられますが…

一番いいのは、就業規則を作成するときに、休業に関する
次のような規定を盛り込むことです。

会社の責に帰すべき休業により就業できなかった場合には、
民法第536条第2項の定めによらず、平均賃金の6割を支払い、
それで足りることとする。

この文章は、労基法26条の最低限度である平均賃金の
6割は確保されているので、労基法違反にはなりません

かつ、民法536条2項の前提条件となる会社の故意・過失が
あっても、就業規則の定めによって、平均賃金の6割で
押さえることができるのです。
つまり、全額を支払わないでよいとすることができるのです。

このようなわけで、労基法対策として有効であるのみならず、
民事的な請求を抑止できる大変役に立つ条文と言えます。
是非、参考にしてみてください!

(以下は、本ブログのテーマ外ではありますが
補足して申し上げておきます…)

しかし、従前から作成してある就業規則を
変更するとなると別の問題が生じます。

それは、労働条件の不利益変更という問題です。

つまり、基本的には、就業規則を労働者に対して不利益に変更する場合には、
労働者との個別合意が必要となり、強行的に規定するには、
合理性が求められるということです。

この問題は、ちょっと重い問題となります。
また、
休業手当の一方的な規定変更がどの程度
認められるかは、判例等の情報がないので、何とも言えません。

ちなみに私見ではありますが、あまりにも経営状況が切羽詰まった段階で行うと、
この厄介な問題が先鋭化することが大いに考えられます。
ですから、慎重に行うことが大事かと思います。

なるべく平和な時期に文章を追加することが
必要だと思います。

また、労働者に説明するにもそれなりの理由や
ロジックも必要です。

貴社なりに今のうちに理由を考えておくとよいでしょう。

このように平時において、窮地に陥ったときの備えをすることは、会社が生き残るうえで
必要なことですし、それは、一人でも多くの労働者の方々の生活を守ることに
つながると考えます。

そのことを念頭に休業手当についても良い案を模索することは
必要なことだと考えます。

ということで、今回は
休業手当について
考えてみました。

また、有益な情報を配信していきたいと思っております。

次回以降は、御要望の多い是正報告書の書き方について
書いてみたいと思っております。

また次回も御期待下さい!