Tag Archive for 未払い残業代

基本給の中に固定残業代が含まれていると主張できるか?


こんにちは、「労働基準監督署調査対策対応支援.com」の
加賀英治です。

またまた、昨年の11月以来のアップでご無沙汰しており、
まことにすみませんでした。
今年こそは、マメなアップを心掛けたいですm(__)m

さて、先回から
固定残業代の設定方法について
書かさせていただいております。

(先回の記事をご覧になりたい方は、以下をクリックしてください。)
固定残業代の設定と未払い残業代…プロローグ

今回は、先回、予告していた、 基本給の中に
固定残業代が含まれているという 主張が成り立つのか?
について考えてみたいと思います。

時々あり得るのは次のような主張かと思います。

「うちの会社は
残業代は払っていないよ。
だって、 基本給に
残業代を含めてるって考えをとっているからね

中小零細企業では、 時にこんな主張が出てくると 思われますね。

それでは、このような主張が通るのでしょうか?

労働基準監督署の調査において、これだけだと
監督官を 説得することはできません

監督官としては、次のような反応をすると思うからです。

「では、具体的に
就業規則にはどのように記載しているのか、まずは
就業規則を見せてもらっていいですか?」

こんな話が出てくると思います。 そこで、
就業規則で労働基準監督官は
何を確認しようとしているのでしょうか?

固定残業代相当部分が明確に分かれていること
目的が残業代相当部分に充当される手当であることを明記していること

このようなことを確認しようとしているわけです。
しかし、規定上はクリアとなっていても、具体的に残業が何時間
発生していて、固定残業代の範囲内で収まっているかどうかを
確認しなければなりませんね。

つまり、賃金台帳タイムカードなどの残業実績を照らして、 実残業代が
固定残業代を上回る場合には、しっかり差額を支払っているか
ということを確認することになります。

具体的には、以上の部分がクリアされているなら、
固定残業代を支払っていると認められることになります。
(以上、小里機材事件 昭63.7.14 最高裁 より要点整理)

この場合は、
是正勧告書で勧告されることはありません。

しかし、あなたが前述の事例のとおり、基本給の中に残業代が含まれていると主張するだけ、つまり、前述の最高裁判例のように固定残業代部分を明確に分けていないということであれば、 上記の要点を踏まえた対策は取られていないことになりますね。

で、後の祭りとなります(-_-;)

つまり、残念ながら、監督官から渡される
是正勧告書どおりに
未払い残業代を支払わなければなりません。

具体的には、以下の計算により支払えという内容になります。

基本給をすべて
(固定残業部分と主張する部分も含めて)算定基礎として時間単価を出し
          ↓(×)
残業時間×1.25(場合によっては深夜等その他割増率)

で計算した額を支払わなければならないのです。

以上のように、
固定残業代を規則で明確化しなかった場合とそうでない場合とでは、
その額の差は歴然となります。

それで、以上の煮え湯を一回飲まされるかもしくは飲まされる前に(-_-;)
就業規則の中に
固定残業代について明記することに着手しなければなりません

しかしながら、従業員は、基本給の中に
固定残業代がいくら入り込んでいるか
明確に知っているでしょうか?

給与明細はどうなっていますか?
このパターンだときっと基本給一本でしか
記載していない可能性が高そうですね(-_-;)

そうすると、あなたの会社の従業員は
そのことを知らない可能性が高いことなります。
うやむやになっているということですね。
(当然就業規則そのものがないということもあり得ますね。)

もしあなたが「前に説明したことがあるよ」
といっても忘れているか、都合が悪いことは忘れたことに
しているかもしれません。

それで、以上のような理由で、社員に固定残業代が含まれているという認識がないなら、
就業規則で
固定残業代を明確化し、そのことについて
コンセンサスをとる必要がありますね。

そうしなければ、当然、後々紛争となり得ます。

しかし、就業規則を変えるといってもコンセンサスがとれずに労働者が、
労働条件の不利益変更だ!認められない
という 強硬的な主張をしてきたら、改定自体が難航しますので、
そのことは念頭に置いてください。

ということで、今回はここまでに致します。
今回もご覧いただき誠にありがとうございました。

また、次回以降も
固定残業代についてになると思いますが、
もしかしたら、別の話題を入れさせていただく可能性も あります。

次回の
固定残業代の内容は、

金額で設定したらよいか?それとも時間で 設定しなければならないのか?」

にしたいと思います。
これもよく聞かれる点なので、
なるべく分かりやすくお伝えできればと思います。

ところで、この
固定残業代については長くなりそうなので、
できるだけ細かく要点ごとに記事をアップして読みやすくしたい
と考えておりますので、よろしくお願いいたします。

ちなみに最近、固定残業代の件で、とみに有名になっている
「最高裁、櫻井裁判官の補足意見」についても
いずれ触れてみたいと思います!

しかし、あまりマニアックにならないように
経営者・管理部門のあなたにわかりやすい内容と
したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは失礼します。

ちなみに残業代は民事訴訟とも密接な関係にあります。
よろしければ、以下の過去記事もご参考ください。

過去の残業代についての記事は以下をクリックしてご覧ください。
付加金・・・懲罰的損害賠償制度?
未払い残業代・・・労働基準監督署の調査と民事裁判との関係(その1)
未払い残業代・・・労働基準監督署の調査と民事裁判との関係(その2)

時間外労働の削減を目的として11月に「労働時間適正化キャンペーン」を実施(平成23年度)


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com」の
加賀英治です。

さて、今回はちょっとタイムリーな情報を御提供
いたします。

厚労省のホームページをご覧いただければ
わかるのですが、平成23年11月中において、厚生労働省は、
時間外労働の削減を目的として「労働時間適正化キャンペーン」を実施します。

(以下、「厚生労働省」URL)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/campaign.html

このようなキャンペーンは度々行われている
はずなので、何も異例なことではないの
ですが、ご紹介しておきたいと
思います。

このキャンペーンはリーフレットの配布などの
広報活動のみならず、重点監督を行うという
ことなので、経営者の皆様方は御用心ください。

まずはこのようなキャンペーンを行う背景について、
厚労省が述べていることをお伝えしたいと思います。

なお、[解説]では、私が厚労省の統計資料を
もとにコメントしておりますので、
御参考下さい。

①30歳代男性で週60時間以上働く人の割合が18.7%であるなど
長時間労働の実態がみられること。

[解説]
ちなみに平成12年度以来、ほぼ右肩下がりで下がっていましたが
平成21年度は18%でしたから、多少増加したことになります。

②脳・心臓疾患に関する事案で平成22年度に労災補償の支給決定
がなされた件数は285件に上るなど、過重労働による健康障害が
多数発生していること。

[解説]
ちなみに平成19年がピークとなっており、あとは右肩下がりで
下がっています。

③労働基準監督署による賃金不払残業の是正指導事案が多く
みられる。

[解説]
ちなみに平成22年度においては、是正指導された企業で、
1企業あたり100万円以上の支払いがなされた企業数は
1,386企業です。

支払われた割増賃金の合計は123億2,358万円、
対象労働者数は11万5,231人となっています。

以上のような背景となっており、一時期よりは
長時間労働等にまつわる問題は低下傾向
ありますが、依然として高い水準にあると考えられています。

そのような経緯から、さらに改善させていきたいと
いう意図が読み取れますね。

それでは、以下、重点的に取り組みを行う
具体的な事項について書きたいと思います。

こちらも[対策]にどのように対策すべきかを
別稿で書きたいと思いますので、
次回以降の記事を御参考ください。

(以下、厚労省資料抜粋)

(1)時間外労働協定の適正化などによる時間外・休日労働の削減

・時間外労働協定(36協定)は、時間外労働の延長の限度等に
 関する基準に適合したものとすること

・特別条項付き36協定等により月45時間を超える時間外労働を
 行わせることが可能な場合でも、実際の時間外労働について
 は月45時間以下とするよう努めること 等

(2)長時間労働者への医師による面接指導など、労働者の健康管理
に係る措置の徹底

・産業医の選任や衛生委員会の設置など健康管理に係る措置の徹底

・長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対し、医師に
 よる面接指導を実施すること 等

(3)労働時間の適正な把握の徹底

賃金不払残業を起こすことのないようにするため、労働時間適性
 把握基準を遵守すること 等

以上、全国的なキャンペーンとなっているので、
11月に労働基準監督署が実際に貴社に訪れることも
あるかと思います。

一応、御注意ください。

なお、(1)~(3)の具体的な対策案
については、次回以降、別稿で記しますので、
貴社でしっかり対策ができているか確認していただければと
思います。

それでは、次回もご覧ください。

次の記事もご参考下さい。
労働基準監督官とは何をする人?
労働基準監督署とは何をする役所?

付加金…懲罰的損害賠償制度?


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com」の
加賀英治です。

今回は、付加金という制度についてご紹介したいと
思います。

(なお、先回のブログをご覧の方は、内容がかなり
重複するので、ご興味のある方のみ
ご覧ください。)

経営者の皆さまにとって
付加金って何?ということかと思います。

まさか、労働基準監督署がお金をくれるということでは
ないことは、お分かりかと思います。

実は、労働基準法に書かれている条文なのですが、
労働基準監督署は関係のない条文です。

それで、ブログの趣旨である、労働基準監督署の調査
の対策目的からは外れるのですが、折角条文に書かれています
し、また、民事裁判までいくと関係のあること
ですから、今回はご容赦いただければと思います。

付加金を簡単に言うと(いえ、かえって難しく言うことに
なるかもしれませんが…)

懲罰的損害賠償的制度

と言ってよいと思います。

それで、やはり懲罰的損害賠償って何?
ということかと思います。

では、まず損害賠償とはどういうものか
見てみましょう。

通常、損害賠償とは、相手方が依頼した仕事をしなかった
とか、ミスしたときに被った損害の相当額を
支払ってもらうことができるという制度です。

そして、実損害以上のものを賠償してもらうことは
できないいうことになっています。

つまり、簡単にいえば100%の賠償です。
(当然と言えば当然ですが…)

これが日本における損害賠償制度
ということになります。

うってかわって、アメリカなどでは、損害を与えた
内容が極めて悪質であるような場合には、通常の損害賠償
に加えて、裁判所の命令によってさらに上乗せして
懲罰的損害賠償」を課すことがあります。

日本において、民法の条文で懲罰的民事損害賠償の
条文を見ることはありません。

しかし、実はこの懲罰的損害賠償的な制度が
労働基準法にあるということです。

付加金です。

それでは、条文を見てみましょう。

労働基準法第114条

「裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した
使用者又は第39条第7項の規定による賃金を
支払わなかった使用者に対して、

労働者の請求により、
これらの規定により使用者が支払わ
なければならない金額についての未払金のほか、これと
同一額の付加金の支払いを命ずることができる。

ただし、この請求は、違反のあった時から2年以内に
しなければならない。」

解説してみましょう。

労働基準法において、一定の条文に違反して賃金
を支払わなかった場合には、未払賃金と同一額の付加金
支払わなければならないということです。

つまり、例えて言うなら以下のようになります。

簡単な例えで恐縮ですが…
未払い残業代が過去1年間で合計50万円あった場合

50万円(未払賃金)+50万円(付加金)=100万円

以上、100万円を会社は支払わなければならない
ということです。

(厳密にいえば、さらに遅延損害金として年5%も加えて
求められます。)

いわゆる倍返しですね。

確かに日本の損害賠償の性質からすると
おかしい話ということになります。

それで、この付加金という制度は
結構特殊な規定といえるわけですね。

なんでこんな規定が出来たのかは、やはり
労働者保護という視点で考えるとすんなり納得
できると思います。

先ほど、労働基準法のある一定の条文に違反したとき
と申し上げました。

その内容がカギとなるわけです。

それでは、どんな条文に違反すると倍返し
させられる恐れがあるのでしょうか?

次の条文となります。

第20条…解雇予告(手当)
第26条…休業手当
第37条…割増賃金
第39条…年次有給休暇

この4つの条文に違反した場合となります。

これらの条文は全て賃金など労働者がもらうべき
金銭が関係していることがおわかりかと思います。

解雇予告は、手当が関係してくることがありますね。
つまり、解雇予告手当を支払わずに即日解雇したような場合です。

休業手当は、会社都合の休業にもかかわらず
会社が労働基準法で定められた平均賃金の6割以上の
手当をしなかった場合です。

割増賃金は言うまでもありませんね。
残業代が未払いということです。

年次有給休暇は、法律で定めたとおりに
付与していなかったり、不当に消化を拒んだりするときなど
に問題になります。

確かにこういった問題については、労働者の
不利益が大きいということです。

それで、悪質な法違反の場合には、
この付加金の支払いが求められるということです。

それでは、誰が請求して、誰が決定することになる
のでしょうか?

労働者が請求し、裁判所が決定する。
ということです。

この裁判所が決定するというところが独特ですね。
労働基準監督署ではないということです。

つまり、民事裁判において損害賠償を請求された
場合には、裁判官の裁量によって、支払う必要があるか
どうか決定するということです。

ですから、労働基準監督署の調査で是正して
終わればよいのですが、終わらない場合は大変
なことになる可能性があるということです。

しかし、裁判例では、全ての事案に
おいて付加金請求が認められるわけではない
ことが分かります。

つまり、法違反の悪質さの度合いによって、
全て請求どおりに認めたり一部を認めたり、
また全く認めないこともあるのです。

とはいえ、民事裁判となるとこのようなリスクも
生じるということは、覚えておいて損はありません。

確かに倍返しされるくらいなら、裁判外
で処理したいと思いますよね?

これによって、未払い賃金などは早めに解消して
置くべき動機づけとなると思います。

それでは、なるべく裁判にならないように
少なくとも労働基準監督署の調査に誠意をもって
臨みたいものです。

それではまた次回もご覧ください。

以下の記事もよろしければご覧ください。
未払い残業代・・・労働基準監督署の調査と民事裁判との関係②