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固定残業代の設定と未払い残業代…プロローグ


こんにちは、「労働基準監督署調査対策対応支援.com」の
加賀英治です。

さて、半年以上ぶりの投稿となりまして、いつもお読み
いただいている方々には大変失礼しました。

ここ半年ばかりまたいろいろありましたので、
今後、可能な限りその「いろいろ」をお伝えできれば
とおもっております。

また、記事をアップしたときは
今まで通りツイッターで流しますので、
ご覧いただければ幸いですm(__)m

さて、今回は、とても相談の多い
固定残業代について書きたいと思います。

実際に
労働基準監督署が
立ち入り調査を行ったときに多々遭遇するのが
この事案となるからです。

つまりそれだけ
固定残業代を導入している企業が多い
からといえます。

また、管理部門の方、経営者の方、社労士の方
等々からこれに関する質問をよく受けます。

実際、この設定次第で、
残業代単価が変わる。
残業代そのものが変わる。

ということになり、経営者のあたなにとっては、まさに
経営に直結する重要な問題となりますので、
しっかり押さえる必要があります。

では、本論に入っていきましょう。

固定残業代とは?

では、いったい
固定残業代って何?

と思われる方もいらっしゃることでしょうから
その説明から入りたいと思います。

通常、日々生じる残業時間というものがありますね。
これは、まさに「日々」生じるものですから、
毎日残業時間数は違うわけですし、
月で積算した残業時間数の結果も各月で異なるわけです。

それで、通常であれば、この残業時間をタイムカードで
管理して、毎月の締め日で集計して、残業代単価を乗じて
毎月支払うことが求められます。(賃金毎月払いの原則)

しかし、従業員が数人ならまだしも、数十人数百人それ以上と
なると相当面倒な作業となります。

それで、これを毎月行うのは煩雑だ、つまり大変だということで
残業代を毎月「○時間分」とか「○万円分」とかと固定化
して、残業代を計算するのをやめてしまおうということで
導入することが多いかと思います。

また、中には、固定残業代部分を明示しておらずに
うちの会社の基本給には残業代が○○時間分入っているんだ
といって一切残業代を支払わないという会社も少し前はあったようです。
また、今も全く存在しないわけではないでしょう。

この場合、
労働基準監督署はどんな対応をするのでしょうか?

しかし、それ以外にもいろいろな理由で
固定残業代を導入したいと思われているようです。
主に次のような理由です。

景気が悪くなってきているが、残業自体はある。
それで残業代を抑制したい。そこで基本給のうちのいくらかを
固定残業代に取り分けて残業単価と残業代総額そのものを
抑制したい。

このような理由を述べる方も多いです。
さらにそのような方の中には次のようなことを
考える人もたまにいます。

「しかも残業をさせても固定で払う分だけにして
あとは実際に何時間残業があっても支払わないようにしたい。

このように考えるのです。

以上、まとめると固定残業代導入についての動機づけとしては、
以下の2つに集約されると思われます。

残業代の計算が面倒
不景気で残業代を抑制したい

では、このような理由で固定残業代を導入するには
どのようにしたらよいのでしょうか?
問題点とはどんなところにあるのでしょうか?

以上について何回かに分けて連載して
書きたいと思います。

しかし、まず基本給に固定残業代が含まれているという
主張が通用するのか?という点から考えたいと思います。

このような対応をとっている経営者や管理部門のあなたに
大きな関心があると思うので。その答えを出していきたいと思います。

申し訳ございませんが、
今回はプロローグ的な部分で
終了させていただきます。

次回は、
基本給に固定残業代が含まれているという
主張が通用するのか?
についてその是非と具体的な対策を考えてみたいと思います。

では、お読みいただきありがとうございました!

過去の残業代についての記事は以下をクリックしてご覧ください。
付加金・・・懲罰的損害賠償制度?
未払い残業代・・・労働基準監督署の調査と民事裁判との関係(その1)
未払い残業代・・・労働基準監督署の調査と民事裁判との関係(その2)

労働基準法解説の推薦図書!?


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com
の加賀英治です。

今回は、ブレイクタイムということで、
少し気楽にご覧ください。

さて、今回は、ちょっと趣向を変えまして、
図書のお知らせを致します。

名前は、
平成22年版 労働基準法 労働法コンメンタール 上下巻
です。



 

労務行政から出ています。

以前、解釈総覧を御案内いたしましたが、
こちらの本はかなり値が張ります!

一冊6,700円、二冊で13,400円 となります。

この
コンメンタール
とは一体
どういう意味
なの
でしょうか?

ドイツ語で「注釈書」という意味です。

要するに
労働基準法の注釈書
ということですね。

内容はというと、注釈書というだけあって、
思ったよりも分かりやすくなっています。

ちなみに前に書いた記事でも、
労働基準監督官がよく使っている
書籍をご紹介しています。(詳しくは、下記をクリック)

労働基準監督官が使っている書籍

これは、「労働基準法 解釈総覧 改訂14版」という本です。

以前紹介したこの本は、法令と通達は細かく載っているの
ですが、やはり内容が硬すぎて読みづらい
のも確かです。

つまり、もうちょっと解説が欲しいな…という
感じが残ってしまうのです。

そこで、このコンメンタールは、平易なことば
で解説されているので、すこぶる読みやすいのです。

しかし、専門書ですから、この本まで揃えて読む
というのは、経営者のあなたにとって
やはり荷が重いといえるでしょう。

でも管理部門のあなたであれば、
1セット持っていても
良いと思います。

実は、このコンメンタールは、以前に
労働基準監督官から勧められた
なのです。

つまり、
労働基準監督官が持っている武器の一つ
というわけです。

ですから、少なくとも専門家、できれば会社の管理部門は、
解釈総覧とコンメンタールは持っていたい
書物ということになります。

では、解釈総覧とコンメンタールの違い
は何かまとめてみましょう。

①内容の違い
要するに解釈総覧には書いていないこと、つまり、運用や注意点
などが分かりやすく解説されており、単なる法令集ではない
ということです。

②用途の違い
あとは、用途の違いでしょうか?
つまり、解釈総覧が、法令や通達をすぐに引けるように
いつでも持ち歩きやすい六法のハンドブック的なものとすれば、

以上のように、このコンメンタールは、解釈に困ったときに開く辞典のような
ものと考えていただければよいでしょう。

もし、ご購入をお考えの方は、
このような内容の違い用い方の違いなどを
御参考いただければ役に立つかと思います。

ちなみに解釈総覧に書かれていないで、
コンメンタールに書かれていることは
どんなものがあるのでしょうか?

やはり、運用面での注意点でしょうか。

例えば、1ヵ月単位の変形労働時間制という制度が
あるのですが、その制度をとことんまで
突き詰めて運用しようとすると必ずと
言っていいほどぶつかる疑問点に答えているのです。

これは、変形期間をまたぐ週の労働時間の枠を
どのように考えたらよいかというものです。

(…といっても、説明しますとまた、紙面が多くなり
読みづらくなるので、また、詳しくは、1ヵ月変形
を取り扱う稿で御説明したいと思います。)

しかし、このブログは中小企業の経営者の
あなたに向けて書いているので、やはり
どちらかと言うとちょっと荷が重い本
かと思います。

やはり、専門家向けですね(^^ゞ

これらの本は、我々社労士なり弁護士なりが
読むとして、私は、これらをかみ砕いて
なるべく分かりやすく経営者のあなたに
お伝えしたいと思っていますのでご安心ください!

このブログが経営者のあなたにとって
一番分かりやすく、有用なものである
ことを目指して精進したいと思います。

それでは、今回はちょっとしたブレイクタイムとなりましたが、
また、労働基準監督署の調査や是正勧告について、
有益な情報を書いていきたいと思いますので、
今後とも御期待下さい!

未払い残業代…労働基準監督署の調査と民事裁判との関係(その1)


こんにちは。「労働基準監督署・調査対策対応支援.com」の
加賀英治です。

ようやく涼しくなりましたね。

さて、今回は、
未払い残業代
について、
労働基準監督署の調査民事裁判の関係について、
書いてみたいと思います。

未払い残業代について、労働基準監督署が調査
に入ったときには次のような対応をとることが
多いものです。

過去6ヵ月(1年など、最大2年)
遡及して支払うこと。

(どれくらい遡及するかは、
労働基準監督官によって異なると思います。)

それで、次のような事例を考えてみましょう。

会社は、何とか労働基準監督官の言うことを素直に
聴いて、無事支払ったとします。

例えば「6ヵ月遡って支払うこと」という指示
に従って支払ったとしましょう。

仮にその後、民事裁判で、消滅時効まで(2年遡及)の残りの
未払い残業代を請求されたとしたら

どうなるのでしょうか?

きっと、ご覧頂いている皆様の中には、つぎのような
お考えの方も多いと思います。

「以前に労働基準監督署が納得するような対応を
とって、それで調査が終了したんだから、
そんなことはないだろう?

こんなふうに考える方は多いの
ではないでしょうか?

しかし、実際はそのような考えが通用しないのです。

つまり、労働基準監督署の調査や是正報告書の提出が
終わったとしても、後日、民事で請求された場合には、
消滅時効まで残りの残業代を支払わなければ
ならなくなるということです。

ですので、労働基準監督署の調査の
対策や対応を経験された方、つまり、
企業の担当者、社労士、弁護士
であれば、だれでも思うことがあります。

それは、労働基準監督署で終われば良い方だ。
民事裁判になったらもっと請求されるから大変だということです。

しかし、次のようにお感じになる方も多いと思います。

「それだったら、労働基準監督署の調査って一体なんだ
ったんだ?どうせなら最初からちゃんと調べて2年なら2年と言って
くれればいいだろう!」

このようなお言葉が聞こえてきそうです。
確かに当時担当した労働基準監督官に対して
怒りをお感じになることも御尤もという
気が致します。

しかしながら、担当した労働基準監督官の言い分
として次のようなものが考えられます。

(一例として)
調べた当時、明らかに
未払い残業が把握できた資料は、
過去6ヵ月までだったので


この場合は、把握している資料に応じて
遡及支払いを求めるしかありません。

労働基準監督官としては、きっとこんな心境でしょう。

「私は私の仕事を私の判断で行ったに
すぎません。さらに様々な証拠が見つかって未払い残業代が発覚した
としても私に責任はありません。」

「そもそも未払い残業代が発生しているのは、企業が悪いのであって
労働基準監督官のせいではないんじゃないですか?」

ということですね。

でもなんか腑に落ちないということもおありかと思います。

それでは、そもそも労働基準監督官に調査の内容について
文句が言えるのでしょうか?

過去にこんな判例があります。(東京労基局長事件)
簡単に言いますと次のようなものです。

労働者が自分に対して会社が労働基準法違反を
しているからということで、監督や指導を求めたところ、
労働基準監督署は監督指導しませんでした。

それを不服としたものです。

これに対して、裁判所は、労働者からの申告は、監督の
契機(きっかけ)にはなりえるが、労働基準監督官がそれを
受けて調査するかどうかについて義務を
負わせるものではない。

つまり指導監督するかどうかの判断は、
基本的に労働基準監督署の自由だということです。

それで、労働基準監督官がどこまで指導や監督を行うか
について強制できない以上、企業が労働基準監督官の
仕事に文句を言うことはできないということになります。

ですから、労働基準監督官の指導や監督を受けて、なんとか
未払い残業代の支払いを終えたとしても、後日、労働者から民事上
の請求が生じることはあり得ると念頭に置くべきでしょう。

でもそれなら一体どうすればいいんだ?
ということかと思います。

その件については、次回にしたいと思います。

よろしければ、次の項目もご参考下さい。
労働基準監督署とはどんな役所?
労働基準監督官とは何をする人?